全国高校野球選手権大会が今夏第100回を迎えるにあたり、試合中継を行うNHKが初めてテーマソングを制作。そのテーマソングを福山雅治が手がけ、8月5日より開幕した大会のNHK中継等でオンエアされた。楽曲タイトルはズバリ「甲子園」。
小学生時代にソフトボールでピッチャーを、中学時代では吹奏楽部で部長を務めていたという福山は、学生時代「甲子園のアルプススタンドで応援するブラスバンド部を"これこそがブラスバンドの檜舞台だ!"と憧れの眼差しで見ていた」と語り、甲子園という場所はグランドもアルプススタンドも憧れの全てが詰まっていると、ひたむきに戦う球児に向けてだけではなく、それを応援する全ての人達に向け、次々に曲調が展開し変化する、壮大な組曲がここに完成!
この写真はポラロイド写真で、一枚しかなく日付けもありません。推測では小学校4年生の頃かと。当時、僕の故郷長崎ではソフトボールが盛んでした。少年達の多くは当たり前のように野球選手になることに憧れてました。僕も周りの友達同様にプロ野球カードを集めていて、町内のソフトボールチームに入ってピッチャーをやっていました。その小学生の頃の憧れとは違いますが、今回こうやって音楽で野球に関われることをとても光栄に思っています。甲子園という場所は多くの人の憧れの場所ですが、「憧れは形を変えて叶うこともある」という僕の実体験から、この写真をジャケットに選びました。福山雅治
NHK Official Music Video
「甲子園」の映像撮影の舞台となったのは、全国高校野球選手権大会の熱戦が繰り広げられる青春の大舞台、阪神甲子園球場。
福山を取り囲むのは、京都橘高等学校をはじめ、甲子園学院高等学校、武庫川女子大学附属高等学校、関西学院高等部、仁川学院高等学校の5校、総勢300名を超える吹奏楽部の部員の皆さん。
吹奏楽部員の皆さんのパフォーマンスは、マーチング部としても有名な京都橘高等学校による振り付けを中心に構成された。
中学時代吹奏楽部で部長を務めていた福山からの提案により企画された本映像は、阪神甲子園球場及び、各校の先生、高校生の皆さんの協力により完成した。
Special Trailer
〈Original Music Video (Short ver.) + Making〉
新たに編集された「甲子園」オリジナルミュージックビデオにメイキング映像が加わった、スペシャルトレーラーを公開!!
この「甲子園」は、全国高校野球選手権大会が今夏第100回を迎えるにあたってNHKのオファーによって制作されたテーマソング。中学生時代には吹奏楽部で部長を務めていたという福山だけあって、大編成のブラスバンドをフィーチャーした意欲的な一曲となっている。
さらに特筆すべきは、いわゆる組曲のような形式を持った曲構成だ。曲中でテンポが何度も変わり、転調もする。同じメロディを、1コーラス目はゆったりとしたクラシカルなブラスバンドのスタイルで、2コーラス目はスウィングジャズのスタイルで展開する。イントロやアウトロも含め、5分間の中に様々な要素が詰め込まれている。
というわけで、今回のインタビューは「甲子園」に音楽的な側面から迫ったもの。楽曲制作の裏側から、直球のタイトルに込めた真意、ビヨンセに触発されたというミュージックビデオの演出まで、いろいろと語ってもらった。(柴那典)
ーー新曲の「甲子園」なんですが、最初に聴いたときに、正直「あれ? ここどうなってるんだ?」みたいに感じたんです。いろいろと音楽的な仕掛けがあって、それを確認するために何度も連続で聴き返しました。
福山雅治(以下、福山):冒頭の転調や曲のつなぎ、テンポが変わってる部分を確認してみた、と。
ーーそうです。僕はスマートフォンにBPMをカウントできるアプリを入れているんですけれど、それを使いながら「あ、ここでテンポが変わった?」って調べながら聴いたんですけれど。
福山:この曲は途中でテンポが変わるんです。4~5回ほど。
ーーそういう挑戦的な曲を、NHKの全国高校野球選手権大会のテーマソングという王道の企画に放り込んできたということに、まず驚いたんですね。なので、このインタビューでは曲に込めた思いよりもまず先に、曲構成や展開の仕掛けについてお伺いしようと思うんですけれど。これは、組曲のような形式の曲を作るというアイデアが最初からあった、ということなんでしょうか?
福山:そうですね。もともと組曲をずっと作りたかったんです。小学生の頃はソフトボールをやっていたんですが、中学に入ってブラスバンド部に入って。そこで体験してきた交響曲、クラシック音楽の体験というのが、やっぱり自分の身体の中にあるんだと思います。その後ブラバンと当時にギターも始めて、高校に入ってからはTHE MODS、ARB、ロッカーズ、ザ・ルースターズといった九州のめんたいロックバンドや、The Clash、Sex Pistolsのようなパンクバンドのコピーバンドをやっていました。ただ、どちらが先に覚えたかというと、ブラバンのほうだった。デビュー後もその感覚はずっとありましたね。ストリングスアレンジが好きだったり、ブラスアレンジが好きだったり。
そんな中で、ホルストの「惑星」とかムソルグスキーの「展覧会の絵」とかドボルザークの「新世界」のような巨大な曲はできないまでも、現代のポップミュージックの中で10分から15分の組曲を作りたいとはずっと思っていたんです。今回の「甲子園」は5分ですけれど、100回記念大会のテーマソングというお話をいただいた時に、これはもしかしたら、いよいよ僕がずっと思い描いていた組曲構想をやるチャンスなんじゃないか!って思っちゃったんです(笑)。
(取材・文=柴那典)
つづきは「Real Sound」にて